用語集

203030

投稿日 2024年05月01日

203030とは、政府が「2030年までに社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が30%になるように」と定めた女性管理職比率の数値目標です。

202030の断念、203030への再スタート

政府は2003年に、202030(2020年までに社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が、30%になる)を、はじめて数値目標として掲げました。当時の企業における女性管理職比率は8.9%(内閣府『男女共同参画白書』2003年版)と、1割にも満たない数字だったため、実現不可能とも言える数値目標を定めること自体に反発や批判の声が上がり、取り組みは非常に限定的なものとなりました。

さらに2013年には、成長戦略としての女性活躍を掲げ、改めて女性管理職の増加(2020年までに女性の管理職比率を30%にする)を戦略目標に定めました。女性活躍推進法の中で行動計画策定が義務付けたり、取組の進んでいる企業を表彰するなどの施策を講じましたが、政治・経済分野における女性活躍は遅々として進まず、2015年12月、第4次男女共同参画基本計画において、2020年の民間企業の女性課長職の割合を15%にすると下方修正をし、事実上、202030の達成を断念しました。

そして、2020年12月に閣議決定された第5次男女共同基本計画において、『2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める』とし、203030を定めたのです。

202030が達成されなかった原因

202030が達成されなかった原因には、法制度の課題と社会構造の課題という2つの要因が指摘されています。現行の女性活躍推進法は「単なる努力目標で罰則がないこと」「強制力がなく実効性のない法律で、企業が目標を達成することは難しい」という意見もあります。

又、女性管理職が増えないもう一つの原因は、そもそも少なすぎる採用、限定された職域、残業・休日出勤などの長時間労働が当たり前の働き方など、社会構造にあります。「管理職に登用できる女性がいない」という意見も多く聞かれますが、長年キャリア育成の対象と見られず、経験や機会の付与が少なかったり、男性型リーダーシップスタイルが求められたり、良かれと思って女性に甘い対応/差別(慈悲的差別)をする上司の存在など、様々な阻害要因がある中で、女性のみに努力を求めることは限界があります。

何故、女性管理職比率30%なのか

30%は、ハーバート大学のロザベス・モス・カンター氏が提唱する「黄金の3割」理論に基づきます。集団の中のマイノリティ(少数派)は、様々な阻害要因や少数派ゆえの課題により十分に力を発揮することができない状態にあります。30%という数字は、「クリティカル・マス」と呼ばれる比率で、マイノリティがマイノリティでなくなる必要最低限の割合です。
30%という割合は、組織に質的な変化を起こし、女性活躍推進の効果を実感するために達成するべき重要なマイルストーンのひとつなのです。

経済界で進む203030の取り組み-女性役員比率を30%に-

経団連は2020年『。新成長戦略』内で「多様な人々の活躍推進への取り組み」を掲げました。その具体的な目標として「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを目指し、会員企業の女性役割増員にむけた活動、「2030年30%へのチャレンジ」をはじめると宣言しました。宣言には「ダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略の重要な軸に位置づけ、ビジネスインパクトにつながる取り組みを推進すること」「取締役会に多様な人材の視点を活かすこと」「後継人材の育成において、それぞれのキャリアステージに応じたサポートを実施すること」「あらゆる社員のパフォーマンスを最大化する組織・環境づくりを追求すること」を掲げています。

2020年の調査(厚生労働省『雇用均等基本調査』2020年版)によると、管理職に占める女性の割合は、部長相当職では 6.9%(2019年度 6.7%)、課長相当職では 10.9%(同 9.3%)、係長相当職では 17.1%(同 16.7%)となっており、目標の半分にも達成しない状況です。又、経団連が目指す女性役員比率においても、2020年7月末時点でのTOPIX100 女性役員割合は12.9%で、まだまだ達成には時間がかかります。203030の目標を達成するためには、官民の垣根を超えて、実効性のある一層の取組みが期待されています。

参考資料

■内閣府『男女共同参画白書』2003年版
■厚生労働省『雇用均等基本調査』2020年版
経団連『2030年30%へのチャレンジ』
■荒金雅子『ダイバーシティ&インクルージョン経営-これからの経営戦略と働き方』日本規格協会、2020年

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