VUCA時代を生き抜くキャリアの創り方~ 自信と行動力を手に入れるモチベーションマネジメントのあり方とは
導入企業のご紹介
パナソニック株式会社 ライフソリューション社
多様性や複雑性のあふれる現在において、女性の力なくしてはビジネスがなりたたなくなっています。働く女性を取り巻く環境も変化する中、組織の論理や制度・仕組みにとらわれることなく、女性自らが自律的・戦略的にキャリアを考え、行動していくことがますます求められています。本シリーズ(この人と語る多様性の未来)では、様々な企業や個人が取り組むD&Iの現状と未来をリアルに伝えることを狙いとしています。
今回のお相手は、パナソニック株式会社アプライアンス社CS統括本部企画部部長兼、サービスサポートセンター所長の今村佳世様です。アプライアンス社はパナソニックの社内カンパニーとして、家電及び、空調関連製品、食品流通、デバイスの開発・製造・販売の事業をおこなっており、約43,000人の社員が働く企業です(2019年1月現在)。クオリアは2017年に、今村氏の前職であるパナソニック株式会社ライフソリューションズ社において、「働きたい会社No.1プロジェクト」のご支援をさせて頂きました。
今回は、パナソニックに入社後、多数の部署を渡り歩くという先例の無い不安の中、自身のキャリアを「横軸で」築きあげてこられたお話を伺いました。
今村様のお話は、自己を過小評価したり、一歩踏み出すことに消極的になりがちな働く女性にとって勇気を与えるエピソードにあふれていました。是非お読みください。
パナソニック株式会社アプライアンス社
CS統括本部企画部部長 兼 サービスサポートセンター所長
今村佳世様
仕事編
仕事に取り組む姿勢、成果を出すためにこだわっていること
今村さんとは、某研究会で出会って以来、15年以上のおつきあいになりますね。私がすごいなと思うところは、異動によって全く違う職場・職種を経験するたびに、それを成長の糧にしているところです。
まずお伺いしたいことは自身のキャリアの作り方です。2つ目は、与えられたミッション・役割を達成する中で、周囲を巻き込む変革の手法です。
こちらこそ、よろしくお願いします。私は、もともとは技術者として入社し、VR(バーチャルリアリティ)を使った顧客の意思決定の研究をしてきました。仕事は面白く、15年の間に工学博士の取得やMBAへの挑戦などを行い、研究者としてのキャリアを深めていこうと思っていた矢先に、人事異動が発令。それは思いもよらない経理関連部門への異動でした。当初は非常に気持ちが揺れ、悩みました。しかし今振り返ってみると、そこが変化の原点と確信しています。
この経験は、自分のキャリアに対する考え方、仕事への向き合い方を大きく変えた転換点でした。
必ずしも望んだわけではない部門への異動。今村さんはどのように受け入れたのでしょうか?
正直最初はしぶしぶの承諾でしたが、1年経った頃には担当した全社プロジェクトのおもしろさが分かるようになりました。「より深く追求する」研究の仕事から、世界を相手に、広くリーダーとしてプロジェクトを推進する「横軸でキャリアをつくる」経験をし、組織を超えて人を巻き込むことや企画することの楽しさやおもしろさを入社15年目にして知ることができたのです。その後、M&A担当や、事業部門長など多種多様な職種異動を通じ、同じ部門にいては経験できなかったであろう「事」「人」と出会うことができましたね。この中で得た学びのひとつが、今でいう「組織開発」だと思います。
研究一筋という道から、まったく違う道に踏み出したからこそ、変わることの怖さを経験し、同時に自分のキャリアが広がることのおもしろさも体感されたのですね。また今村さんは、社外とつながり視野を広げるという場を持っていたり、社内で評価してくれる上司や役員が存在していたり、と、いわゆる人との関係性が強い印象がありますが、いかがでしょう。
人が何をやっているのか、何に活き活きとしているのか、ということに興味があります。
数字で他人を判断しない、ということを意識しています。その人がどう考えているか、常に自分の肌で感じて解決策を見つけるようにしています。ある会議の場で「どうしてこんなことになったのか、こうしなかったのか」と聞くと、「どうせやっても仕方がない」「最初からこんなものだと決まっている」「私達は期待されていない」という返事が返ってきたことがあり、それがずっと心に引っかかり、なぜそんな事を言うのだろう、考えるのだろう、と探求し続けました。数字では表すことのできない事に、本当の要因があるのです。
ショウルームで起きた変化
次は前職のショウルームで行った改革について、お話を聞かせて下さい。
営業部門は数字という結果で仕事内容を表現できますが、ショウルームの仕事は何をもって表現するのか非常に難しいのです。ですから、着任してすぐに何度もヒアリングしました。ショウルームスタッフには、商品説明や設計提案のみならず、自分が主体となり職場を動かしているという強みに気づいてもらい、それを社内にアピールしました。
改革のキーワードとなる「働き方№1の会社をつくる」という発想の源はどこにあったのでしょうか。
人が主役の職場をつくりたかったのだと思います。事業は商品が主役ですが、ショウルームは人が主役。人が輝くことに価値があります。新しいことに挑戦する不安や恐れを持つメンバーの気持ちを尊重しながら、最大限に力を発揮して貰うために、何が最も適切か色々考えました。これまでのパターンを壊し新しい感覚を入れ、チャレンジを一緒に行うためには、社外の力が必要でした。このプロジェクトには「行動を変える」ために働きかけてくれる人が必要で、それは荒金さんしかいない、と考えたわけです。
お声をかけて頂き、光栄です(笑)。今回のプロジェクトではクオリアのオンライントレーニング「アクションフォー(旧サービス名称:Diチャレ!)」を採用していただきました。研修後の8週間、自分が決めたアクションについて日々実践しながら、オンラインでお互いがフォローし合うツールです。途中で業務に追われアクションがおろそかになることがあるため、2週間目と6週間目にオンラインのミーティングを入れ、モチベーション維持を目指しました。メンバーの行動が見える化できるのが面白い点です。
オンラインチャットだけではなく、電話でフォローし合うチームもありました。アクションフォーの仕組みがあったからこそ、行動が見えやすく、連絡もしやすい、コミュニケーションをとりやすかったのではと思います。講師の先生がきて、お行儀よく講義を聞いて終了、後日レポート提出、といった今までのやりかたとは違うことを仕掛けたかったのです。WEBを使う、そこでコミュニケーションを取り合う、アクションフォーはまさに今までと違う仕組みでした。事務局も含めたメンバー皆が新しいことにチャレンジしないと、新たな発想が湧かないと思います。たとえ失敗しても、脱落者が出ても、新しいことに取り組むことこそが価値ある経験だと思います。
アクションフォー開始直後は、自分がリーダーとして職場に戻って皆をひっぱっていけるのか、影響を与えたり働きかけたりすることができるのか、と悩んでいる方もいました。けれど、メンバーが励まし合ったり、サポートしあう中で、「働きたい会社№1プロジェクト」の当事者として、新しい未来を自分達が創っているという自信と意欲が生まれたのではないでしょうか。
ありがとうございます。現在、ショウルームは全国68か所にあります。昨年設立60周年を記念し、現場の輝く人にフォーカスを当てて、その活動を冊子にしました。また、働くうえでの「クレド」を作成したり、お客様はもちろん自分達も大切にしようと「自分をほめる」ための小冊子やピンバッジ、私のサイン入りのしおり(笑)も作成し、特性のトートバッグにいれて配布しました。
「働きたい会社№1プロジェクト」を最後まで見届けることができずに異動となってしまったことは残念ですが、今年の社長表彰を受けることになったそうです。本当にやって良かった!と心から感じています。
着任後すぐに現場に行って直接話す、というのが一貫したスタイルですよね。今村さんの強みとは何でしょうか。
目を輝かせること、でしょうか(笑)。2つ目は解明したくなること。3つ目は目標に向かってみんなで道筋を立てて歩んでいくことを大事にしていること。新しいことを考えて実行するのは大好きですね。
常に与えられた環境で最大の結果を出す印象がありますが、何か弱みはあるのでしょうか。
強みの裏返しかもしれませんが、変えたくなることですね。「変えないで」と言われたこともあります(笑)。
もう一つは、長時間労働はできない。以前は24時間365日という仕事のやり方をしていましたが(笑)、いまは残業やりたい放題、体力勝負は無理です。これ(長時間労働)に関しては、自分が戦うべきフィールドではないと割り切っています。もちろんワークライフバランスは大事、ということもありますが、それよりも仕事一辺倒だと、新しい発想を思いつかなくなりますよね。同じことをし続けろと言われるとたぶん3日で死んじゃいそう(笑)。
未来にむけて
この国で、女性管理職であるということ
女性で役員となった方の多くは、自分が女性だからといって引け目を感じる、という人は少ない気がしています。もちろん女性として組織の理不尽さや不平等を感じることはあると思うのですが、それ以上に「仕事が面白い」「与えられた仕事の中でどれぐらいの結果を出す」といったことに達成感や自己成長を感じたり、やりがいのある仕事に楽しみを見出している気がします。今村さんは、普段「女性」を意識していらっしゃるわけではないと思いますが、そのあたりいかがでしょうか。
確かに、女性役員の皆さんは「仕事に恋をしている人達」っていうイメージはありますね。私の場合、仕事がものすごく好きだから、というよりも、目の前にやってきたテーマがどんどんおもしろくなってのめり込んでいる、という感じです。新入社員に対しては、「目の前にあることをおもしろくする」というように伝えています。
これからのキャリア、セカンドキャリアのイメージはお持ちですか?
実は今までのキャリアは石垣を築いてきたイメージです。これから「やっと今から本当の城をつくることができる」という感じですね。与えられた中だけでがんばるのはもういいかなと。今までは与えられた中で「どう楽しむか、どう成果を出すか」だったのが、これからは「自分が培った経験をどう生かすか」ということに賭けたいと思います。
VUCA時代のキャリアの創り方
最後にVUCAと言われる今の時代、まだまだ十分な実力を活かしきれていない、と思っている女性へのメッセージをお願いします。
※VUCA(VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。
いつ何をしなければならない、ということを決める必要、制約を自分にかける必要はありません。例えば20代から働かなければならない、主婦になったからずっと主婦でいなければならない、といったように。制約をかけずに、タイミングがあればそのときできることをチャレンジすればいい、「いつでも道を変えられる」という思いでいたらいいのではないでしょうか。
変わることへの不安を持つ人には?
変わらないことが心地良い人はそれでいいと思います。しかし、日常は変化無しに生きてはいけないので、大きな変化でなくていいから「何が起こったか」という小さな変化に気づくことが大切です。変化による楽しさを自分の中に結びつけて、客観的にみることができたらいいと思いますね。
それに加えて、自分を褒めることも大事。誰かの基準で評価をされるとなると、嬉しい時、しんどい時があります。自分のためのバレンタインチョコのように、自分を褒める余裕をもてば新しい世界が見えると思います。全ていつも誰かのためだとしんどくなりますよ。
おそらく、荒波のなかで、いやが応でも変えなければならないことも出てくるし、それによって失敗することもでてくるでしょう。でも、「自分は失敗しても、ここまで頑張った」という肯定を1つでも入れることによって、次に向かって進めると思います。
そのとおりですね。特に、真面目な女性ほど、「もっとできるはず」と常に自分に高い水準を課したり、常に誰かと比べて自分を認めることができない人が多いような気がします。
そうですね。5つ全部褒めていたら成長はないと思うので、とにかく1つ自分を褒める。後4つは通常どおり目標に向かって頑張る。この1つがあと4つを支えるエネルギーとなってくると思います。
「変革」「イノベーション」「成功」「チャレンジ」などの言葉はとても大きなことのように聞こえますよね。実際はそうでもありません。変化を起こすステップとして、①今まで気づかなかった小さなことに気づく②今までと違うことをする③それにより小さな変化が生まれる④のちに大きな変化につながる、というのがあります。
「小さな変化」が大切ですね。私は、小さな変化をおこした人を徹底的に「褒める」ことにしています。多くの企業では「弱みにフォーカス」することに焦点があたりがちです。なぜあえて弱みにフォーカスした弱点補強型で、世界中の強みで生きているトップの人たちと勝負するのですか、ということを言いたいですね。
世の中は全員同じことをやっているわけではないので「違い」にもっと焦点を当てるべきだと思います。違うことに価値があるわけなので、何が違うのかを見つけること、その違うという色を揃えることが会社としての全体的な強みとなる。違う強みをいかに伸ばすか、強化することにフォーカスするべきですね。
今村さんと話していると、いつもインスパイアされます。また、大胆な発想を実現するフィールドをお持ちなので、行動がどんどんスケールアップされていくように感じています。今後もお互いにとって良い仲間でありたいですね。
今日はどうもありがとございました。