実績紹介

オピニオンダイバーシティで高める女性活躍推進と関西電力のD&I推進の現在地

投稿日 2024年6月26日
関西電力株式会社 市原 貴之様 と荒金雅子のツーショット写真
右: 関西電力株式会社 市原 貴之様  左:荒金雅子

導入企業のご紹介

関西電力株式会社

今回は関西電力株式会社の市原貴之様に、同社のD&I推進の軸とされているオピニオンダイバーシティと女性活躍推進についてお話を伺います。関西電力株式会社(本店:大阪府大阪市)は、『「あたりまえ」を守り、創る』をパーパスに掲げ、発電からエネルギー調達、そして関西一円へ電気の安全・安定供給を行う電力会社です。クオリアは女性活躍推進やファシリテーション研修、D&I研修、啓発冊子制作他、D&I推進全般をご支援しており、2012年から10年を越えるお取引があります。

関西電力株式会社 人財・安全推進室 人財育成グループ/D&I推進グループ チーフマネジャー 
市原 貴之様
関西電力株式会社 市原 貴之様

関西電力株式会社
人財・安全推進室 人財育成グループ/D&I推進グループ チーフマネジャー
市原 貴之様

2002年に技術系総合職として入社。主に発電事業を中心にキャリアを積む一方で、企画系の仕事にも従事。2022年に人財・安全推進室に異動し、人財育成グループとD&I推進グループの長として2つのグループを併任。

リーダーが語る!対談の紹介

「変えるべきものは変えろ」技術畑からD&I推進グループへの登用

関西電力株式会社とクオリア対談の様子(2人で歓談)

本日はお忙しい中、誠にありがとうございます。
貴社のD&I推進は、当初から女性活躍とオピニオンダイバーシティ(意見の多様性)の2本柱で取り組まれています。実は日系企業でオピニオンダイバーシティ(意見の多様性)を打ち出している会社様は少なく、特徴的なお取組だといえます。又、数年前から女性の健康課題を管理職研修の中に組み込んだり、メンター制度なども導入されていると伺いました。今日は女性活躍とオピニオンダイバーシティを中心に、それらの施策について、導入背景や現時点での効果等、ぜひお聞きしたいと考えています。

さて、クオリアは関西電力様がD&Iをスタートされた時からお手伝いをさせていただいていますが、D&I推進グループのリーダーは、これまでお一人を除いて、全員男性の方でした。これも実は他社と比べて、珍しいケースかと思います。
D&I推進グループに来られるまでに、市原様はどんなキャリアで歩んでこられたのでしょうか。

私は2002年の入社で、技術系総合職です。
入社以来、技術職として主に発電事業で(発電に関わる)燃料関係の仕事や企画系の仕事に就いていました。その間、関係する認可法人への出向なども経験しました。

関西電力様ではキャリアチェンジともなる職種転換は多いのですか。

そうですね。
過去は、技術系の職種は配属された事業部門の中でキャリアアップしていくケースが多く、一方で事務(スタッフ)系の総合職は様々な部門を渡り歩くという傾向がありました。ここ最近は、私のような技術系出身のものが、キャリアアップの中でスタッフ系部門にいく機会も増えてきています。
近年、組織の色々な部門で、違った意見や観点を取り入れていく必要があるだろうという機運が高まっています。変革が激しい中で、まさに多様性の重要性がうたわれていますが、さまざまな属性の人たちの「違う」意見を取り入れ、活かせなければ、関西電力グループとして持続的な成長はないと思っています。
そういう意味では、私のような、技術系の人間が、人財育成やD&I推進のような「人」の仕事に携わる、異なる視点や観点を取り入れていく、これまでの視点も活かして「変えるべきものは変える」ということこそ、(個人の解釈でもありますが)会社から私への期待であり、私が人財・安全推進室に配属された意義だと捉えています。

専門性を持ち技術の現場を知っている方が、人事のような「人」に関わる仕事に就く事で、双方の気持ちが分かる利点がありますね。そして、やはり全く違う部署や分野から着任されると、「人」の分野の面白みや難しさも体感されたのではないかと思います。

どちらかというと、技術や研究は結果が明確で、プロセスもわかりやすいですね。対して、このDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進は、何がゴールかも分からないし、今やっている施策が本当に自分たちの望むところにつながっていくかがイメージしにくい。また、すぐには結果が出てこない。

そんな戸惑いはありませんでしたか。

戸惑いだらけでした。

2年前にこの職を担う前は、恥ずかしながら自分自身、DEIの知見や知識が決して豊富だったわけではありません。
技術系の職場は、いわゆる男性職場で、それが当たり前だと思っている状態でした。そのため、着任当初は「ここで自分の価値を出すには何をしたら良いのか」とか、「今の当社の従業員に足りないものを何なのか」といったことさえも、具体的な自分なりの答えや考えを持てていたわけではありません。

しかし、「人」の仕事に関わると、他企業との情報共有の機会がたくさんあります。そういうところに積極的に参加することで、自分の知を深めるとともに、当社が抱える本質的な課題は何なのかに向き合うよい機会をもてていると思います。

男性ばかりの職場でも感じた会社の「女性活躍推進への本気度」

クオリアは、長く人財育成(「女性部下を持つ役職者向け研修」を担当)に関わらせていただいていますが、女性活躍に関する会社の変化を実感されたことはありましたか。

技術の現場に女性社員が少ないとはいえ、(他部門をみれば)少しずつ女性も増えてきているなと肌で感じていました。当時の自分の周りの上司、同僚、部下を見ても「会社として女性活躍にしっかりと力を入れていく」という姿勢や意識は、年を追うごとに強く感じ取れるようになっていました。これまでも経営層からのメッセージや、月1回のメルマガ等で情報発信がありましたが、人財育成は時間をかけて積み重ねていくものだと思っています。クオリア様にご提供いただいている研修も長きにわたり積み重ねていただいているので、その効果によるところは大きいと思っています。

継続の結実!発電という業種・業態でもすすむ女性活躍推進

市原様が入社された頃や当社が関わりはじめた2011年当時と比べれば、女性の社員比率や役職者の比率も、変わってきていますね。

女性役職者比率は、2010年度末は0.7%だったものが、2022年度末時点で3.2%と、割合だけをみると、変化は少なく見えるかもしれません。それでも、登用人数をみると過去に43名(2010年度実績)だったものが2022年度には166名になり、女性役職の数は3倍以上になっています。

しかもその登用された一人ずつに、彼女たち独自のキャリアや仕事観、成果がある。一人ずつの顔がそこにあるわけですよね。(女性役職者に限りませんが)育てようと思わないと組織内のリーダーは増えませんが、市原様としては、この変化をどのようにお考えですか。

一つに弊社の事業内容、業態上の特性があるのかなと思います。メインである発電事業や販売、送配電含めて多くの職場で女性が働きにくい環境がこれまではあったように思います。
その中でも、近年では如実に管理間接部門、事務系において女性社員が増えています。技術系の採用も現在10%以上と、着実に増えています。働き方改革や職場環境改善は、まだ道半ばの部分はありますが、より働きやすい環境に変わってきていると思います。
他社と比較すると、まだまだ割合は少ないですが、我々の業種・業態で見れば確実に、着実に進展していると受け止めています。

そうですね。継続が大事ですね。と同時に、(様々な企業様をご支援する中で)女性活躍は「続けること」こそ難しいのだと感じるときもあります。

同業他社様でお手伝いした際、D&Iや女性活躍の取り組みは、3年あるいは5年経ったら「まあまあ一区切りか」と、一旦辞めてしまうことも過去にありました。でも、一度辞めるとやっぱりなかなかその次が続かないし、逆に辞めたことによって後退してしまうこともあります。

それに対して、関西電力様は、しっかり予算と人と確保した上で、施策を継続的に実施されている印象をもっています。

成長機会の少なさに着目!メンター制度の導入経緯とその手応え

D&I施策について語る関西電力株式会社の市原様

昨年度よりメンター制度を導入されたと伺いました。どのような背景から、メンター制度を導入されたのでしょうか。

女性の経営幹部候補の育成を目的に導入しました。

それまで女性社員のキャリア開発の機会といえば、入社2年目や4年目、8年目など、比較的若い世代に対して、研修を手厚く実施してきました。一方で、これまで女性の経営幹部の育成を目的とした直接的な施策は行ってこなかった現状もあります。

当社の役員が女性社員のキャリア形成を支援する役割を果たし、女性社員が経営幹部としてより一層活躍できる環境を整備することは意義があると考えています。また、役員自らがメンターとなることで、メンター側にも新たな気づきをもたらし、多様な視点を経営判断に活かすことにもつなげていきたいと考えています。

そのようなことから、女性社員を対象に、「役員が自ら直接に(メンティである女性社員の)能力伸長に関与するという目的で、今回のメンター制度を立ち上げました。

具体的にはいつからはじめられたのですか。

2023年1月から試験導入して「どのような効果があるのか」効果的なやり方、運営プロセスの検討も含めて改良した上で、2023年10月に本格的に実施しました。

日本でメンター制度を実施する場合、事前のマインドセットが重要だと言われています。貴社の場合はそのあたりの工夫をどのようにされていますか。

事務局から、事前に一例としてメンタリングの進め方や留意点をメンター、メンティともに説明をしていますが、実際に進める際にはメンターである役員側に次回のテーマ設定等リードをするようにお願いしています。対話の頻度は各ペアチームに任せていますが、大体月1~2回ぐらいはされている状況です。

何組ぐらいペアがありますか。

今回は4組です。

メンター1人に対して、メンティ2人で、チームを作っています。
序盤は互いの信頼関係を構築する段階でもありますので、1対2ではじめて、以降は基本的に1対1で実施して頂くようアナウンスしています。どこのタイミングで1対1に変わるかは、基本的には各メンターにお任せをしています。

メンタリングは個人の内にある思いや考えを引き出すことが重要なポイントの一つだと考えておりますので、通常業務の話にならないよう、業務上直接的な関係がないメンターとペアになるようにしています。

役員・女性社員双方に効果あり!相乗効果を生むメンター制度の工夫

素晴らしいですね、具体的にはメンター・メンティの双方からどんな声が聞こえてきていますか。

参加した女性社員からは、自分が何をしたいのか改めて考える機会になり、経営幹部のサポートを通じてより高い視座を持つことができたという感想を貰っています。また、役員からは、仕事と育児の両立に関する悩みなど、新たな気づきがあったという感想を聞きました。

当社の役員は50代男性が多く、どちらかというと家庭への貢献度は低い方が多い世代。仕事と家庭の両立に対するリアルな苦労や課題を聞くことが役員自身の新たな気づきにもつながっているようです 。

このような機会がなければ、双方にもこういった気づきはなかったのかなと現時点で感じています。

(さらに新たな気づきや発見を得るためには)メンター同士で話をする場を作るという手もありますね。

メンターである役員の方の中には「メンティの変化があまり感じられない」「自分がやって何の意味があるんだろう」「役に立っているのか」といった疑問を感じる方が、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。

事務局がメンターに個別に聴くよりもメンター同士でメンタリングの内容を話し合うとより効果的です。互いに話し合う場をつくることで、他の人の発言から「自分のメンティとの関わりがちょっと浅いな」という人もいらっしゃれば、「自分のメンティはこういう変化があったんだな」と改めて感じる方もいらっしゃいます。メンター同士の対話を通して、「自分がメンタリングをしているこのメンティには、早く成長してほしい」「他のメンターよりも、自分は良い関わりをしたい」という気持ちが生まれやすくなります。

職場や部門独自の施策展開を促進!D&I推進情報共有会議

総論的にはなりますが、他企業様とのディスカッションをしている中でも、うちの会社が今展開している施策や制度は、それなりに整備されているなと感じている一方で、これで十分だとは思っていません。

これまで当社ではD&I推進グループが全社一律な施策として、さまざまな施策を企画・運営・実施してきています。次のステップとして、これまでの電気事業のみならず、新たな事業など、業種が多角化している中で、各事業部が抱えている課題は何なのかを見出し、取り組んでいく必要があると思っています。

これからは各事業部がそれぞれの課題にしっかりと向き合い、自発的・自律的にD&Iを進めるために何をすべきか、そのためにどうやるべきか、それぞれが考えてもらいたいなと思っています。D&I推進グループはあくまでもそれを下支えし、フォローする。今後は、そういう関係性に変わってくる時なんだろうなと思っています。

おっしゃるとおりですね。
ここ数年、業界問わず、各拠点に推進リーダーやダイバーシティ担当者を置くケースが増えています。それも(推進リーダーは)総務など他部門を兼任されていたり、プロジェクト形式で広くメンバーを集ったりなど様々です。その拠点ごとの課題も多種多様です。

最初は一律に上から下に降りていくような手法も必要ですが、貴社のフェーズを考えると、たくさんの拠点をお持ちなので、落下傘的な推進だけで浸透させることは難しくなっていくと思います。

そうですね。その課題感は非常に強く持っています。

これからは(各職場で)独自の施策やそこに合った手法を取り入れていく必要があると思いますが、今後はどのような職場や部門独自の施策展開を考えられていますか。

昨年から「D&I推進情報共有会議」と名前をつけて、半年に1回の頻度でD&Iに関する事例や取り組み共有のための対話を行っています。

各事業部、支社も含めて広く声掛けしながらお互いの取り組みを紹介し、D&I推進グループが考える今の課題や最新の情報、各拠点の実状などを共有する場として設置しました。

(部門間を超えて、互いの施策を共有し合うことで)それぞれが課題に気づき、「うちの部門でもできるのではないか」というアクションにつながることを期待しています。

既に、例えば、女性社員が少ない部門が「自分だけではできないので、ちょっとよその部門と合同でやりませんか」という動きや、「他の部門が実施したので、うちでもやってみよう」という声も上がっています。

現場の課題は現場の方が一番ご存じです。当事者が集まる場をつくることで、D&Iの取組みを当事者目線で深めて広げ、発展させるとさらに面白くなりそうですね。大変楽しみにしています。

オピニオンダイバーシティ施策推進で感じた現場の変化

オピニオンダイバーシティの重要性について話す荒金雅子

では、もう一つの施策である関西電力様のD&I推進施策の軸である意見の多様性(オピニオンダイバーシティ)に関する現場の変化はいかがですか。(クオリアは2017年より同社のファシリテーション研修を担当)

組織全体に、特に上司側において、グループミーティングやディスカッションするときに、意見を引き出そうとする/聴こうとする上司は増えてきていると思います。私の入社当時に比べると、とても変化を感じます。

10年近く前、「ファシリテーションを学ぶ実践型ワークショップは初めて」と、戸惑われてる雰囲気を感じました。
「意見を共有してみんなでホワイトボードや模造紙に書いてください」というと、一人か二人実行される方がいる程度で、大多数の方は「何をさせられるんだ」というような、困惑された表情でした。

それは困惑する社員も多かったでしょうね。

でもそのうち、自分からどんどんホワイトボードに書き出す人が出てきたり、そしてそれが当たり前になってきたり。

変化が目に見えますよね。

そう!変化が「目に見える」ってとても大切です。あと、やはり続けることの大切さを感じたのは、皆様の言葉から「小さな変化を自分の現場で感じたこと」を伺ったときです。

学習と実践を積み重ねていくことによって、少しずつ変化はあるのでは、と思います。

すべての社員の皆様に貴社のD&I施策が波及していくことがますます楽しみです。冒頭に申し上げたように、関西電力様の取り組みを広くお伝えしたいなとずっと思っていましたので、それが叶い、大変嬉しいです。本日は本当にありがとうございました。

対談ありがとうございました!

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