実績紹介

心理的安全性を掲げたフジッコのダイバーシティ推進の取組み

投稿日 2022年03月08日
左から寺嶋様、荒金

導入企業のご紹介

フジッコ株式会社

ダイバーシティ推進の成功のためには、トップの強いコミットメントと、それを実現する現場のアクションが非常に重要です。フジッコでは、ダイバーシティ推進グループメンバーが主導となり、全社の営業社員を対象に、2021年度にクロスロード・ダイバーシティゲームのワークショップを実施しました。

今回は、取締役上席執行役員として、ダイバーシティ推進を牽引されている寺嶋様、ワークショップの企画・運営に携わったダイバーシティ推進グループの中嶋様、中村様、宮島様に、活動の目的や社内の変化についてお聞きしました。

<第一回:働きがい改革で組織変革!ダイバーシティ経営を進めるフジッコの覚悟はこちらをご覧ください>

フジッコ株式会社 取締役上席執行役員 人財コーポレート本部長
寺嶋 浩美(てらじま ひろみ)

兵庫県 出身。神戸大学農学部を卒業後、1987年フジッコ㈱入社。商品開発、マーケティングを経て通信販売事業部では事業拡大に貢献。2018年に人事部門へ異動、2021年取締役上席執行役員人財コーポレート本部長就任。

リーダーが語る!対談の紹介

ダイバーシティ推進のテーマは心理的安全性

本日は貴重なお時間をありがとうございます。寺嶋さんとはもう10年来のお付き合いですね。

フジッコ様では、心理的安全性をダイバーシティ&インクルージョン推進の大きなテーマとして掲げています。その中で当社のアンコンシャス・バイアスの研修やクロスロード・ダイバーシティゲームを導入いただきました。心理的安全性に力をいれる背景やきっかけはどのようなものでしたか。

心理的安全性は、成果をだす組織のキーワードであり、ずっと当社でやりたいと思っていましたが、ようやく2021年に実現しました。

経営層に業績結果だけでなく 、心理的安全性やアンコンシャス・バイアスについて「そうだよね!重要だよね」と受け止めていただけるタイミングをずっと計っていました。
まずは私たち自身が「意見を自由にいえる風土をつくろう」と決め、荒金さんにお願いすることにしたのです。おかげでいい取組みになりました。

ありがとうございます。実際にどのような変化があったとお感じですか?

最近は「対話のための風土」が徐々に整ってきている気がします。例えるならば、土が耕されている感じがしますね。「こういう種を植えましょう」というと、すでに土が耕されているので、「そうですね」と、すぐ次にいける。

最初に皆さんが意見を言いやすいようにする/そういう環境を作れる上司がいい上司だねというコンセンサスが、社員の皆さんと共有でき始めていると思います。

昔は、上司がガンガン示したり、(部下や自分自身について)長時間労働で働く社員が良い社員とされていた時代がありました。そういう価値観も大きく変わったなと思います。

そうですね、時代によって求められる組織風土やリーダー像も変わってきますね。

商品開発からマーケティング、ダイバーシティ推進室へ

寺嶋さんは現在、取締役上席執行役員 人財コーポレート本部長 ですが、今まではどのようなキャリアを送ってこられましたか。

私は商品開発で入って、ずっとマーケティング畑でした。その後、通販の事業部長になってから、執行役員を5年間勤めました。

もともと上を目指すとか、管理職になろうという意識はあったのでしょうか。

すごく仕事が好きだったので、上を目指していけば、予算を使えたり意見が通りやすくなったり、できることが増えると思っていました。

女性が管理職になるためには様々な壁や障害、時には妨害もあると思いますが、どのような工夫をされていましたか。

「教えを乞うこと」、また「熱意を持って伝えること」を意識していました。最初に配属された商品開発では資材や品質管理の責任者の方々や、工場長などに「お客様視点ではこういう商品が気に入ってもらえると思います!」「この商品が開発できれば、女性が助かると思うんです!!」と、直談判していました。すると、「そう言うなら協力しようか」と助けてくれるようになりました。

キャリアに対して、上司からの働きかけはありましたか。

当時の上司から「これからは女性も経営リーダーとしてやっていかないといけないよ」「やってみればなんとかなるよ」と言われました。

部長就任時は、女性管理職が2名だけという状況。それでも自分がやらなきゃ、と「女性も意見を持っていることを知ってもらおう」「何人もの女性の意見を代弁する」「会議では絶対に発言する」と決め、足が震えながらもやっていました。

執行役員になってからも、どの議題にも必ず意見を言うと決めていました。就任間もなく、社長から「寺嶋さん、最初に発言するよね。それはいいよ」「最初に発言にすると、他の人が言いやすくなるから、大事だよ」とおっしゃっていただき、それもあってやってこられたと思います。

執行役員になってみると、経営の情報が入ってくるようになり「面白いな」と感じました。勉強しなければならないことも増えますが、色々なことがわかるようになることが喜びでした。

又、人事に異動してからは経営層と話す機会が非常に増えました。そのやりとりを通して、「取締役の皆さんは、日頃こういうことを考えているのだな」というトレーニングをさせていただいていたような気がしますね。

ダイバーシティ推進では「一緒にやったこと」を喜びにできる

商品開発から人事に異動となったときに、戸惑いはありましたか。営業や商品開発は「自分で成果を上げること」がわかりやすいのですが、人事の仕事は、自分一人では成果が出せず、間接的です。「今やっている仕事がどうつながっているのか、わからない」というストレスや、社内の関係性の問題もよく伺います。

おっしゃる通りです。

開発はヒットしたら「あの商品の開発者は寺嶋さんだよね」となるし、(通販)事業部では 売上がありますので、とにかくわかりやすい成果が出せましたが、人事部の仕事はKPIの達成にしても時間がかかります。

一方で、人事の仕事は一緒にやってくれた皆さんと「うまくいっているよね」と確認しあえることを喜びにできる仕事です。

より気持ちいい環境や関係性ができたときに、「そういう考え方がいいですよね」と、受けいれてくださる方が多いと思っています。

執行役員になってからも、どの議題にも必ず意見を言うと決めていました。就任間もなく、社長から「寺嶋さん、最初に発言するよね。それはいいよ」「最初に発言にすると、他の人が言いやすくなるから、大事だよ」とおっしゃっていただき、それもあってやってこられたと思います。

2021年に当社が掲げた心理的安全性に対しても、社長やダイバーシティ推進室が発信したことに対して「こういう風に会社がなってくれたら、本当にいいわ」と歓迎してくれて、それを続けていこうとする姿が見えることが、今の楽しみですね。

ダイバーシティ推進でカードゲームを導入した理由

フジッコ様では、今年横断的にクロスロード・ダイバーシティゲームを展開いただきました。

このゲームをやってみると、「楽しい!」「こんな風に上司やチームと話し合ったことなかった!」と社員の皆様が喜ぶんですよね!コロナ禍によって急激に話し合う場が減った中で、「じゃあ、業務のこと話しましょう」と言ったら、みんな固まっちゃう。でも、クロスロード・ダイバーシティゲームだと言いにくいことや微妙な問題も率直に対話をすることができます。コミュニケーションツールとして、すごくいいと思います。

ありがとうございます。対話の誘発/創発を、このゲームでは大事にしています。

このゲームは、ものすごく傾聴力が身に付きますよね。どんなに研修をやっても傾聴力が身に付かなかったのに、クロスロード・ダイバーシティゲームだと「みんながこんなに良く考えた異なる意見をもっている」と実感できるので、マネジメント教育にもなるなと思います。

今、管理職が(別の部署で)クロスロード・ダイバーシティゲームの進行役をしていますが、ファシリテーションスキルも身についています。クロスロード・ダイバーシティゲームの場をちゃんと運営できるマネージャーを増やすことも来期の目標になっていますね。

貴重なお話を誠にありがとうございます。キャリアのお話など多方面に伺えて、大変勉強になりました。

次は、現場で実際に導入・ファシリテーターを務めているダイバーシティ推進グループのメンバーの皆さんのお話も伺いたいと思います。

クロスロード・ダイバーシティゲームを全社で展開!受講生の反応は?

左から中嶋様、荒金、中村様

中嶋 睦美(なかしま むつみ)課長
担当領域: 心理的安全性のある職場づくり、女性活躍推進、障がい者雇用

モチベーションの源泉: 誰もやったことがないことに取り組むこと

中村 美理(なかむら みさと)
担当領域: キャリア開発研修、育児両立支援、イクボス推進

モチベーションの源泉: 従業員の笑顔を見ること

宮島 美邑(みやじま みゆ)
担当領域:階層別研修、自己啓発支援、 LGBTフレンドリー推進

モチベーションの源泉: 曖昧さ回避

御社では、本社や全国の営業所で クロスロード・ダイバーシティゲームを導入・展開いただきました。反応はどうだったでしょうか。

営業と商品企画・マーケティングを行っている部門、そして工場の一部に実施して約300名が参加しました。そのうち99%が「参加してよかった」「とても良い機会だった」と言ってくれました。

「同じ部署の人とこんなに話したことはなかった」「プライベートの話など今までしたことがなかった」「(勤務中は)業務に集中していて他の話ができないし、在宅勤務が増えている中で、お互いを知るよい機会だった」という反応でした。

元々は、役員会で実施したのですが、参加した本部長のみなさんが「ぜひうちの本部でやりたい!」と言ってくださり、9月から11月にかけて大々的に実施することになりました。当社は10月頃から繁忙期に入るのですが、部課長がスケジュールを調整してくださり、実施することができました。

それは大変嬉しい反応ですね。

クロスロードダイバーシティファシリテーター養成講座を受講した理由

企業で、クロスロード・ダイバーシティゲームを内製化/展開される場合、私たちクオリアのファシリテーターが出向いて研修を実施したり、カードだけを購入して展開いただくことも多くあります。

全社展開前に、御社クロスロード・ダイバーシティファシリテーター養成講座を、中嶋さんと中村さんに2名で受講いただき、しっかり学んでいただきました。

社内で「(カード購入や講師派遣ではなく)担当者が養成講座を受講する意味はあるのか」という声はなかったのでしょうか。

そういった声はありませんでした。私達は日頃から社内研修でファシリテーターを務めることもありますので、ごく普通に「自分達が展開していくのだ」という意識で養成講座を受講しました。

カードゲームで効果あるの?養成講座で気づいたこととは

クロスロード・ダイバーシティファシリテーター養成講座を受講した感想はどうだったのでしょうか。受講前の印象との違いはありましたか。

正直申しますと、受講前は「ダイバーシティをカードゲームでやってどういう効果があるのだろう」と思っていたんです。

でも、実際にやってみると、自分の思い込みに気づきました。例えば、私には子どもがいますが、「小さい子どもがいたら転勤できない」と(無意識に)思い込んでいました。でも、転勤の問題カードが出た時に、受講生の中にまさに小さいお子さんがいながら転勤をした女性がいて、いろいろな気づきがありました。その時に「これはいいな」と思いました。

展開して実感!クロスロード・ダイバーシティゲームの効果とは

クロスロード・ダイバーシティゲームの問題文では、転勤や介護、呼び名問題など、普段の生活ではなかなか話さないテーマがでてくる場合もあります。

それまで会話したことがないテーマを外部の方と話すことで得るものがありました。社内で展開したときも、同じ部署にいてもいろんな意見があって、たくさんの発見がありました。

ゲームのファシリテーターをされてどうでしたか?かなりの回数を実施されていますが、ご自身の中で何か変化がありましたか。

グループの中には沈黙するグループもあってそういう時は自分も少し入りますが、話してくれそうなグループの場合は、場に任せてみる大事さを感じています。
私はよく自分が話過ぎるときがあるのですが(笑)、場を信頼することも、ファシリテーターをする中で知りましたね。

クロスロード・ダイバーシティゲームでは、全員が必ず理由を述べる、というルールがあるので、普段発言しない人も絶対に発言する、/自分の意見を言う、というのもこのゲームのいいところだと思います。

今回は皆さん同じ部署から参加されたのでしょうか。

はい、今回は同じ部署のメンバーで実施しました。もともと「心理的安全性のある職場づくり」というテーマで今期は取り組んできましたので、その最小単位である「課」から始めました。部長の参加は任意でしたが、興味をもったある部長は管轄する複数の課の回に参加されていましたね。

宮島さんには、当社の体験セミナーにご参加いただいていましたが、ゲームを体験したり、実際にクロスロード・ダイバーシティゲームを社内で展開される中で、感じられたことはありますか。

「いろいろな意見があっていろいろな方がいるな」と思いました。長く人事に所属していると、事前にこの人は「こんなタイプだろうな」とイメージしてしまうことがあります。ゲームを通して、(自分のイメージ)通りだなと思うこともありますが、意外な一面が見えるときもあります。「こういう一面があったのか」とか「(思っていたより)よく話す方なのだな」とか。

同じ部署で日頃からよく話している相手のことは知っているつもりだったけれど、ゲームを通して、「ああ、そういう風に考えているのか」ということに改めて気づくこともありますね。

展開した私たちも、ゲームを通して、部署を知る/個人を知るという点で、とても勉強になりました。

営業本部で実施した際に、本部長や部門長が「(部下たちは)こんなことを言うのか!」と、とても喜んでくれました。日頃、上層部が気づいていない部分が、(ゲームを通して)見えたのかなと思います。

そうですね。クロスロード・ダイバーシティゲームをすると、(普段のメンバーの一人ひとりの)意外性に気づくことが多いです。普段は踏み込んで話をしない話題でも、自己開示をすることによって、お互いをより近く感じられるようになります。

今までは「他の部署の人」「あの営業所の人は」とひとくくりにみてしまいがちだったことが、ひとくくりにせずに、「その人自身」を見るようになるということでしょうか。

クロスノート・ダイバーシティゲームで感じた社内風土の変化

今回のゲームを通して、今回はアンコンシャス・バイアスや心理的安全性をテーマに進めてこられましたが、社員の皆さんの意識はどう変化したと思いますか。

最近は、「これは偏見かもしれないけど・・・」という枕言葉をつける人が増えました。また「それ、アンコン(シャス・バイアス)ですよ!笑」と上司に突っ込む人も散見されます。

ゲームの途中でも言ったあとに「あ」って(自らで)「私、これってアンコンです」という人がいました。

今までであれば、気づかなかったこと/アンテナが立たなかったことに対して、ゲーム体験したことで、知識と日常業務がより紐づいた、という感じですね。

そうです、おっしゃる通りです。

セクハラのように、それを言ったから即NGというよりも「やっぱりアンコンシャス・バイアスはあるよね」っていう認識が広がる点もいいですね。笑いというか、共感というか、やっぱり誰にでもあるよねっていう風に、気楽さがあるところも大切かなと思います。

ダイバーシティ推進では「触れてはいけない」「どこまで気をつかえばいいのか」というセンシティブさもあり、現場の皆さんも、とても悩まれていると思うのです。

ゲームを通していろいろな意見を交わす中で、「これはOKと思っていたけど、やっぱりまずいのかな」と気づくことができます。いかに自発的な気づきを引き出すかという仕掛けづくりが、ダイバーシティにとっては大事だと思っています。

部署を越えた関係性をつくるために!ダイバーシティ推進の展望は

来年(インタビュー当時は2021年末)に向けてどのような展開をお考えですか。

ゲームを通していろいろな意見を交わす中で、「これはOKと思っていたけど、やっぱりまずいのかな」と気づくことができます。いかに自発的な気づきを引き出すかという仕掛けづくりが、ダイバーシティにとっては大事だと思っています。

心理的安全性は、OS(オペレーションシステム)のようなものだと思います。ダイバーシティには、イクボスやLGBTなど様々なテーマがありますが、まずは心理的安全性があって、そのうえに様々なアプリ(イクボスやLGBT)が生きてくる。ですから、この取組みを今期で終わせるのではなく、ぜひ来期以降も継続していきたいです。

例えば、部署をまたぐ関係性構築を目標としてクロスロード・ダイバーシティゲームを活用することも考えています。できればフジッコのオリジナルの問題カードを作りたいですね。職場からいろいろな意見を集めて、全社新春カルタ大会じゃないですけど、クロスロード大会などできればいいなと思っています。

クロスロード大会!とても素晴らしいアイディアですね。

開発・製造・販売の連携は他社様でも抱えている問題です。みんな同じテーマで悩んでいることやまったく違う視点を持つことに気づく機会を作ることが非常に重要だと思っています。

ゲームを作る際は、当社としてもぜひ、何かお力になれればと思います。
本日はありがとうございました!!!

対談ありがとうございました!

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